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With a Brother, Without a Sister : 突然の誘い

きんちゃんのお兄さんから電話あって、近くに来てるからちょっとだけ海にドライブに行こうと誘われました。てっきりきんちゃんも一緒なんだと思って、待ち合わせ場所で待ってたら、お兄さんだけでした。すこし躊躇したんだけれど、あまりにも誘って当然のようにエスコートするから、気がつくと助手席に乗ってました。
海はここから近いんです。車で20分くらいで海浜公園に出ます。テラスになってるカフェがあって、そこでコーヒーを飲みました。海風はまだまだ肌寒くて、30分もすると体が冷えてきたので、帰ることにしました。
きんちゃんのお兄さんも、首都圏の大学に行ってますが、こうして暇さえあると帰ってくるそうです。どうも肌に合わないんだって。彼女も同じ大学なんだけれど、授業が忙しくてなかなか時間が合わないから、むしろ一緒に住むこと考えてみたいです。なんだか大人な会話を聞いたような気がします。
それからきんちゃんのこと、わたしのことをあれこれ。でもたいていはお兄さんが話をしてました。「妹がよく話しをするゆとりちゃんと話をしてみたくなった」と言ってたんだけれど、ただ話し相手が欲しかったのかな。
家に戻って30分もするときんちゃんから電話。ちょっと怒った口調で「ゆとりって、いつからそんなに軽率な子になっちゃったのっ? 男の子と学校フケたり、お兄ちゃんの誘いとかに乗ったりして」だって。ちょっとカチンときたので「きんちゃんのお兄さんって、そんなナンパな人なの?」って聞き返したら、「そうじゃないけど・・・」って口ごもっちゃった。
「だいじょうぶ、あなたの大事なお兄さんは取らないから」ってふざけて言ったら「あんなクソ兄貴、だれとくっつこうと構わないんだけれど、ゆとりにはね、もっと純粋な人とつきあって欲しいのよ」ときんちゃん。「わたしの大事なゆとりはね、男の子になんて渡さないのっ」って最後には付け加えてた。なんだかなぁ。でも峰小沢くんも、きんちゃんのお兄さんも、そういうんじゃないんだけど。
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Two Of Us Going Nowhere : 午後のサボタージュ

峰小沢くんはバイト、続けているみたい。今日も学校が終わったらバイトらしい。他には天気の話とか他愛ない会話してたんだけれど。昼休みが過ぎて、わたしが教室に戻らないのを気にして、どしたの?って聞くから、首をかしげてみた。正直に、今日はサボっちゃおうかなぁ、って話をしたらびっくりしてた。峰小沢くんは、授業サボったことないみたい。というか、昼休み終わってもまだ戻らない時点で遅刻なんだけれど。
「一緒にサボる?」って聞いてみたら、峰小沢くんは一瞬考えて、すぐに同意した。「よしっ、いこう」って猫背にして小走りに行こうとするから笑っちゃった。だれも捕まえたりしないのに。でもそう思う自分って、「サボリ」の先輩みたいな、変な気持ち(笑)。
それからふたりで駅前のハンバーガー屋に入って、延々とおしゃべりしてた。彼はバイトに行く前に、かばん取ってくるって学校に戻ったけれど、わたしはそのまま帰ることにした。
あ、男の子と授業サポってふたりでハンバーガー食べたって、これってデートにはならないよね?、うーん、それともなるの?
Here Come Fresh People; 新入生来たる

きんちゃんは、わたしがまだ眠ってるような時間、朝早く家に迎えに来たんです。でもって、わたしの部屋に入ってきたと思ったら、わたしの布団の中にまで入ってきて(!)あれこれといたずらして。。。もうっ、恥ずかしくて書けません!っ
とにかく、ギブアップ。ちゃんと学校行きますって(しばらくの間は)。暗く落ち込んでるのはわたしだって嫌だし。
きんちゃんが言うには「授業にはでなくてもいいから、とにかく新入生歓迎会手伝いなさいっ」だって。学校から予算が削られていく中、人手が足りなかったみたい。労働力としてこき使われました。手伝うかわりに、人前でギター弾くのだけはカンベンしてもらったんだけれど。
彼女の陣頭指揮の下、みんなのアイデアのつまった新入生歓迎会開かれました。部活紹介ではどこも凝っていて、劇あり歌あり新体操デモンストレーションありで、さすが高校生はレベルが違うと、新人たちは見入ってくれてました。大成功です。
きんちゃんは裏方に徹してステージには一度も上がらなかったんだけれど、最後には同じ中学から来た後輩たちに取り囲まれてました。さすがに後輩たちに「これからは"きんちゃん"と呼びなさいっ」とは言えなかったらしく、以前のように"ミコサマ"と呼ばれて照れてました。同級生の取り巻きの女の子には厳しいきんちゃんだけれど、後輩には甘いみたい。中学でもほとんど先輩後輩の付き合いをしてこなかったわたしは、ちょっとうらやましく感じました。
Spring Has Come For Sure; きんちゃんぎんちゃ

辛いとか悲しいとか、あまりそういうんじゃないんです。行っても行かなくてもどっちでもいいんじゃないかなぁ、と思うと起き上がる気がしないだけ。きんちゃんと電話でそう話しをしたら、明日の朝はゆとりの家まで迎えに行くから、必ず連れ出すからねっ、って言われました。わざわざ遠回りして来てくれるそうです。
ぎんちゃにも聞いてみました。学校に言った方がいいか?って。
ぎんちゃは、そういう質問に答えられるのはキミが中学生までの話なんだけれど、友だちとして答えるなら、金子ミコの言うことに賛成、と言われました。
ぎんちゃってのは政府の児童情報支援システムであり、GINCHA と書きます。正式名称は"GINCHA Is Not CHAractors system"の略なのだそうです。(さっぱり意味がわかりません) 小学生中学生のデジタルデバイドを無くすため、10年前からこの国のすべての小中学生が無料で利用できるようになっています。情報端末が無料で貸し出されますが、ネット上で利用することも可能です。それぞれの児童ひとりひとりに合ったキャラクターが用意され、悩みや質問に答えてくれます。小学校低学年からの付き合いですから、わたしの癖や考え方をよく理解してくれてます。
一方で当局は児童の健全なる育成のために情報を役立てています。どこまで情報を利用できるかの取り決めは法律で決められており、プライバシーは完全に守られると公報していますが、それを信用せずまったく使わない人もいます。きんちゃんの家でも至急された端末はその日のうちに物置に放り込まれた、と言っていました。
利用できるのはふつうは中学生まです。中学になってまで、システムを使っている人は幼稚とバカにされるので、友だちが増えて行動範囲が広がるにつれて次第にGINCHA離れをしていきます。
わたしは奨学金を受ける条件として3年間利用し続けることになっています。高校生のデータが必要なんだそうです。もっとも、わたしみたいなのがサンプルになるんじゃ、間違った高校生像ができてしまうんじゃないかな。
わたしのぎんちゃは(名前もそのまま"ぎんちゃ"って呼んでる)うさぎ型をしています。わたしといるせいか、けっこうワルな性格になったように思います。
So Hard To Say Good Bye; 不意打ち

2年生はクラス替えがなく、みんないっしょのクラスになれるものだと思ってたから、なんの心配もなく(初日からサボることもなく)学校にいったのです。でもりっちゃんはクラスに居ませんでした。
飛び級で首都の大学に行くことになり、高校を中退することになったそうです。急に決まったことで、大学との手続きのため、あいさつには来れないそうです。そう先生から伝えられました。
りっちゃんの親族は法律関連の仕事についている人が多く、彼女自身も法学に進みたいと言ってたのは知ってました。いち早く念願が叶ったことは彼女にとってとっても良いことなんだろうし、わたしもいっしょに喜ぶべきことなんだろうとは思います。でも、なにも黙って行っちゃうことないじゃない。急にいなくなっちゃうことないじゃない。ちょっと泣きそうです。
夕方、携帯にりっちゃんからメッセージが入ってました。
「先生から聞いてると思います。突然決まったことで、ゆとりちゃんに話できなくてほんとうにごめんなさい。二度と会えないわけじゃないから。時間が出来るようになったら必ず会いにいくから。そして、これだけは覚えておいて。これから先ゆとりちゃんにいろいろな事があるかもしれないけれど、私はゆとりちゃんの味方だから。辛いときには必ず相談して。わたしも大学でもっとたくさん勉強をしてゆとりちゃんの役に立てるような人になるから」
Happy Payday To Me;自分にプレゼント

結局4日間しかやってないので、大した金額ではないですが、初めてのお給料なので、いろいろお世話になった人に何かプレゼントしたい気もする一方、そんな風に分けてしまったらほとんど残らないので感謝は気持ちだけにしておこうかな、と思ったり。あー、とっても現金な気持ちです(笑)。
今日、例の男子と話をしました。偶然バイトで会った同じ学校の。峰小沢くんといいます。お給料をもらって帰ろうとしたところ、走って声かけられました。わたしのことお金持ちだと思ってたらしいから、バイトしてることを不思議がってました。いつもきんちゃんやりっちゃんと一緒にいるから、そう見られたのかな。それにうちの学校って、私立でちょっとお金持ちの子多いし。
わたしの家はそういう意味ではかなり普通の家だし、この高校に入れたのも奨学金のおかげだし。そう言うと、すごく頭いいんだね、って言われたけれど、それも違うんです。成績がよいから奨学金をもらったわけじゃなくて、なんていうか、まぁ懸賞にあたったみたいなもんなんです。中学のときのあるコンテストで。
峰小沢くんは、バイクを買うためにバイトしてるそうです。春休み終わってもやるみたい。いっしょに続けよう、と言われたけれど、わたしには学校とバイトはムリかなぁ。
そうそうバイク乗れるのなら、フォークリフトに乗せて、って頼んだら、それはまた別の免許がいるからムリと断られちゃいました。
男子とはあまり話をしたことなかったんだけれど、学校を離れるとなんだかけっこう大胆に話ができる自分にちょっと驚いちゃいた一日でした。
Strong Kind Of Woman; きんちゃんの手腕

分単位のスケジュールで行動しているきんちゃんは、約束がキャンセルされてたまたまぽっかり1時間も(!)開いたので、もったいないからわたしを呼び出したとのこと。どうせわたしは刺身のツマですよ、ってすねて見せたら、「そんなことない、わたしはメインディッシュしか食べないんだから」とペロリと唇を舐めて艶かしい視線を送ってきました。きんちゃんはどこまで本気なんだかわからない。
でも彼女はたくさんの友だちがいて、みんなを分け隔てなく大事にしているので、特に春休みはスケジュールがいっぱいになっちゃうらしい。今日は4月からうちの高校に入る予定の後輩たちに会ってきたとのこと。
「で、新歓イベントやろうと思うの、新人歓迎イベントっ」ときんちゃん。
去年わたしたちが先輩たちに親切にされるととてもうれしかったから、今年はそれに輪をかけて後輩たちを熱く熱く歓迎してあげたいんだって。きんちゃんは生徒会に入ってるわけじゃないけれど、こうしたイベントがあるとイベント引受人になっちゃう。企画に準備にあちこちを飛び回っるから、ますます一段と忙しさが増しちゃうんだけれど。
でも彼女の実行力が大人顔負けであることは1年生のときに実証済みだ。学校内だけじゃなく外の業者とだって対等に交渉できる。親がすごい実業家だからとか、実はきんちゃんのお兄さんが以前ここの生徒会長だったからとかで、色眼鏡で見られがちだったけれど、今では誰もが彼女の手腕が本物であることを認めてるんだ。
以前にきんちゃんが話してくれたことがある。
「中学のとき、とても悔しかったことがある。学園祭のときに、いままでにない趣向で正門通りを飾りたくて、みんなの賛同も得て先生に掛け合ったんだ。いいアイデアだと先生も褒めてくれたものの、そのアイデアを実施するには、いままでの業者を変えて新たに業者選定しなくちゃならなかったの。で、紆余曲折の結果、結局ものと業者で例年通りの仕様になっちゃった。担当の先生がその業者との間に癒着があったとは思わないけれど、あうんの呼吸で通じる業者を変えて、業者選定してゼロから説明する暇なんてなかった、というのが本当の理由だったみたい。
そのとき思ったんだ。アイデアだけでなく、最後まで自分でやり遂げる実行力が伴わなければ、だれも小娘の言うことなんて聞いてくれないんだって。当時のわたしにはそれだけの実力がなかった。それからずいぶん勉強したんだ、商売のこと、取引のこと」
つねに前向きな姿勢もさることながら、本当実力を身につけてしまうところがきんちゃんの類まれな能力だと思うし、みんなが憧れるところなんだよね。
それよりも、その新歓イベントで、わたしにギターで伴奏を弾いて欲しい、だって頼んできました。いやぁ、無理です。ぜったい無理。ありえないです。ごめんなさい。それだけは許してください。
Until My Guitar Gently Weeps; 練習、練習、練習

わたしのギターはマキさんに借りたもの。遊びにきたときはわたしのギター練習を見てくれる。今日は「ギターをジャカジャカかき鳴らすのは楽しいけれど、もっとストイックな練習しないとダメだよ。運指練習のようなメカニカルなトレーニングをね」と言われた。
マキさんは言う。「音楽もコミュニケーションという意味では言語みたいなもの。音楽は感覚的なものであることは確かなんだけれど、一方でとても論理的でもあるの。その上とってもシビアな言語。0.0数秒の違い、ちょっとのピックの角度の違いで意味が変わってくるんだから。だから正確に伝えるには、常に思ったとおりに弾けるようになることが必要なの。それには十分な練習が必要。ただしそれで身につくのは言語の文法だけ。なにを表現するかは、これからゆとりが生きていく人生に他ならないんだけどね」
マキさんの言うことはちょと難しいところがある。けれど同じギターをマキさんが弾いたとたん違う音色になってしまうのを目の当たりにすると、マキさんの言葉に重みを感じるなぁ。ただ運指練習って、指がこんがらがって、頭もこんがらがって、ついつい投げ出したくなっちゃうんだよね。エアギターみたいに思い切りジャジャーンと弾けたらいいのに。